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彼らが本気で編むときは、

久しぶりにブログ更新。

NEWSな2人でもやっていましたが、生田斗真トランスジェンダーの女性、リンコさんを演じている映画「彼らが本気で編むときは、」を観ました。
とても感想を語りたくなる映画でしたので語らせていただきます。
ネタバレというネタバレはありませんがある程度内容について触れています。

 

 

生田斗真という人は本当に不思議で、思わぬ場所で思わぬ姿で何度でも私の前に現れてくる。
1回目は1996年ごろ、天才てれびくんてれび戦士として。ジャニーズであることを知っていたかどうか。
2回目は2001年ごろアイドル誌を毎月私が買っていた頃、4TOPSの一員として、山Pとシンメ。
3回目は2006年花ざかりの君たちへの中津くん。学ランを着て。
そして4回目が今回2017年、女装姿。

もちろん3回目と4回目の間にはCMとかで斗真くんを何回も見かけているのだけれど、演技仕事をきちんと見る機会は意外となくて、10年以上も間が空いてしまった。中津くんついこの間な気がしているのに、10年。1回目と2回目、2回目と3回目の間の2倍くらいあいている。
10年前は高校生役だったのに、今回は少年時代は別の役者が立てられていたよ。

まずはやはり、生田斗真の女装について述べたい。
コメディ要素ゼロの女装。あまりにもジャニーズ俳優がやるにしてはチャレンジングな役にも思えるけれど、斗真くんは実にさらりと演じていた。それがどれだけ難しいことか。
生田斗真という人は、一般男性の中にいれば女性的に見えるのかもしれないけれど、ジャニーズの中や同年代の俳優の中で特別に女性的な顔立ちや体つきというわけではないと思う。
映画の中でも、遠目からは女性に見えるかもしれないが、近くで見ればやっぱり男だ。女性にしか見えないということはない。声だって、変えてはいるけど、やっぱり男の声。
だけれども、画面全体の印象がとてもさらっとしている。自然ではないけれど、自然に見えてくる。そのあたりの映画としてのバランスが絶妙だと思った。化粧っ気があまりないところや、女言葉が過剰すぎないところも、とても成功していたと思う。
最後の方は、リンコさん、とてもきれいだった、そう自然と思える。しぐさとかには、きっと相当気を遣ったのだろうな。

だがしかしこの映画は、リンコさんの映画なのか、トランスジェンダーの映画なのかというと、あまりそうは思わなくて、
リンコさんがどういう思いでここまで生きてきたのか、語られる部分は、それほど多くなかったりもする。
リンコさんと恋人のマキオと暮らすことになる小学生の女の子トモが裏主人公という感じで、とても印象深かった。

このトモは小学5年か6年くらいだと思うのだけど、決して明るい子ではない。可愛げがあるわけでも友達が多いわけでもない。
この映画のトモを見ていると、自分がそれくらいの年齢だったころのことをまるで昨日のように思い出す。
基本的にはトモ目線で物語が進んでいく部分が多いので、小学生の自分に戻って、あのころの自分だったらどんなふうにリンコさんを見るだろう?と考える。
女性の体になったリンコさんと、これから女性になろうとしているトモ、この対比。
そのころの私は、女になんてなりたくなかった。かといって男になりたかったわけじゃない。この気持ちは今でも自分の中のどこかにある。無性になりたい願望みたいな。
それはトランスジェンダーの人が自分の性別に違和感を覚えることと、似ているのかもしれないし、全然違うのかもしれないんだけれど。

この映画を見てこれほどに昔のことを思い出すのは、この映画の風景の撮り方にも原因がありそう。
田舎じゃないけど都会のど真ん中でもない緑の多い住宅街の日常風景が、なんだかものすごく懐かしく見える。
街のざわめきとか、差し込む夕日とか、流れる川とか、カラスの鳴き声とか、そういうものが、視覚聴覚ともにとても丁寧に描かれていて。
私にとってはとてもそのころを思い出させるような風景ばかりだった。

タイトルにもなっている「編む」ということ。
リンコさんが「編む」意味を語るシーンで泣いてしまった。
リンコさんにとって編むことはある重要な意味を持っている。その意味自体はトランスジェンダーの彼女ならではのものだけど…実は似たようなことを私の母もやっていた。母の場合は「編む」ではなく「縫う」「刺す」だったけど。生きていくうえで発生する無念さや苛立ちややり切れなさといった様々な思いをすべて目の前の布にぶつけていた。その思いのいくらかは本来私に対するもので、それを、私ではなくて布にぶつけていた。それが母のやさしさだった。
私は裁縫も編み物も昔から苦手で、何が楽しくてやるのか全然意味がわからない。母の姿を見て、うまく手が動かなくて余計イライラしてしまうんじゃないかと不思議だった。そして普段生きていて、縫ったり編んだりがストレス解消だという人に、母以外会ったことがなかった。でも映画の中で出会ってしまった。いろんなことが一瞬で思い出されて泣いた。

もうひとつ印象的だったのは児童相談所がリンコたちの家にくるシーン。
児童相談所が悪者として描かれていなかったのは、本当に良かった。全体的にもいわゆる世間が敵として描かれているシーンは、この映画全体のなかでわりと少ない。
そしてそこにクロスオーバーしていくシーン。本当に見えるべきものが可視化されていない現状。
とてもショッキングだけど現実社会の一面を表しているシーンだと思った。

とにかくサラッとしていて嫌なエグみがなるべく抑えられているこの映画の中で、
エグいのは、母親たち。
トモの母親であるヒロミと自分自身が少し似ているなと思ってしまう自分がいた。
それは母親の編み物に興味を示さないところだったりとか。
ヒロミのこと、「自分にとっての優先順位をうまく考えられない人」という表現がされていたと思う。重い言葉。

結末は決して希望にあふれたものじゃない。何かが解決したわけじゃない。
その先の彼らの人生を思って胸がいっぱいになった。

題材は一見トリッキーだけれどたくさんの要素が詰まっていて自分の心にフィットする部分が多い映画でした。
良い映画に出会ったなぁ。
斗真くんありがとう。そして見ようと思わせてくれたNEWSな2人に感謝。